強引な彼との社内恋愛事情
彼の家に一泊
あれから数日。広重とは話をしないように避けていた。
エレベーターをあんな使い方するなんて信じられない。
というか、気をつけてと言ってる本人が一番危険だ。やっぱり関わりたくない。
田原さんに「遠山」と声をかけられたのは喫煙所の前だった。
「田原さん。お疲れ様です」
「タバコ?」
「はい」
偶然にも二人きりだった。
軽く仕事の話をしていたはずだったのに、急に「遠山は結婚とかしないのか?」と訊いてきた。
「へっ?」
「結婚とかするつもりないのか?」
「相手、いませんもん」
「もしかして。あれから?」
そう言われて小さく頷いた。
「あんな男さっさと忘れちまえ」
「忘れてます」
田原さんが忘れさせてくれました、なんて死んでも言えない。