強引な彼との社内恋愛事情


広重の家はそこから歩いて本当にすぐだった。

狭いマンションのエントランス。鍵を差し込み、自動ドアが開いた。


着いて来てしまった。

結局、私も他の女の子と変わらないのかもしれない。

少しお酒が入って、キスされて、誘われてノコノコ着いてくるなんて。

だって、やっぱり。

ひとりは寂しい。

手なんか繋ぐのも、唇を求められるのも久しぶりなせいか、ポロポロと心の周りを固めていたコンクリートみたいなものが剥がれ落ちていくのが分かった。


そうしてみると、自分って本当に寂しがり屋だ。

自覚すると辛くなるから、嫌だったのに。

広重って、なんかずるい。

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