強引な彼との社内恋愛事情
「そうですか。わかりました」
広重はアッサリそう言った。
「じゃあ」
「じゃあ。お疲れ様です。気をつけて下さいね」
お疲れ様って、なにをだよ。
ニコニコと笑う顔は、いつもと変わらない。
変わらないことが、少し悔しいなんて。
私、なにを期待していたんだろう。
「雨、降ってるみたいですね」
下駄箱に立てかけられていた傘を私に手渡した。
エレベーターを降りて、エントランスを出る。
歩いてると、目指してたわけじゃないのに公園を見つけた。
昼間に見る桜は闇をまとわないせいか、雨に濡れているせいか、はっきり春の終わりを告げていた。
ザワッと風が吹いて落ちる。吹雪なのか嵐なのか。
水たまりに浮かぶ花弁ってあまりにひどい。
やっぱり終わりは儚いものだよ。
私は好きじゃないかも、広重。