強引な彼との社内恋愛事情


「それって……?」


うん、と頷く。告白だよと言いたかったけど恥ずかしくて声にならない。
視線を逸らしたくて俯く。


「千花さん、顔あげて。俺を見て」


「い……今無理」


ガラにもなく顔がたぶん赤い。そんなの絶対見せられない。


だけど、広重は簡単に私の顎先を彼に向けさせる。


「千花さん、顔真っ赤」


「……」


「好きって言って下さい」


「……無理」


「俺、どれだけ待ったと思います?」


ハァと短い溜め息。


「じゃあ好きって言わなきゃキスしますよ?」


「えっ?」


「キスと好きどっちがいいですか?」


意地悪すぎる。だけど、ずっと待ってくれてた彼に、やっぱり伝えないといけない気がするんだ。


あれだけ冷たい態度をとったって、こんな可愛げのない私だって受け入れてくれたのだから。


「タイムアウト」と、広重は私にキスをした。
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