ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
和美先輩の赤ちゃんを抱っこさせてもらった時……。
今まで意識しなかった母性本能が私の中に生まれてしまったのかもしれない。


私は、響さんと私の赤ちゃんを想像した。


だって、私と響さんは家族になったんだから。
今は二人きりでも、結婚っていう繋がりを持って新しい家庭を築いて行く。
その決心の中で、子供の存在を当たり前に想定していた。


赤ちゃんが生まれて初めて、私と響さんの間に、『家族』としての血の繋がりが出来る。
それが、いつか当たり前に訪れる形だと思っていたけど。


今のままの生活で、私と響さんの間に子供が出来るなんて、良く考えたらあり得ないことだった。


普段の寝室もハネムーンですら、ベッドは別々。
結婚式の誓いのキスすら誤魔化されて……私達の間には『愛』がない。


一生守ってやるって言ってもらった。
それは私にとって確かな幸せだったって思う。


でも響さんは、私に『愛』は誓ってくれなかった。


恋人同士の過去はない。
家族にしてもらえたけど、夫婦とも言えない。


響さんが私に求めた役割って、一体何なんだろう……。


これまで何度も響さんに感じたドキドキを思い出して、なんだかとても虚しくなった。


ただ、はっきりとわかることが一つだけ。


この気持ちが恋じゃなくて良かった、ってことだった。
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