ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
なんとなく仕事の話をしながら、私は中谷さんに傘を差し掛けて歩いた。


私が送ったメールはまだ見ていないらしく、どんなこと聞かれるのかな?と問い掛けられた。
話は駅までの短い距離じゃ終わらず、なぜか私はオフィスからほど近いカフェで中谷さんと向き合う羽目になった。


雨で冷えた身体に、ホットのカフェラテが染み入って行くように温かく感じる。
中谷さんの方は、意外にも甘いココアをチョイスした。


「仕事で疲れた時って、甘いものに走りたくなるのよね~……って。
……ごめんね。今気付いたけど、付き合わせちゃって大丈夫だったかな」


中谷さんが私を探るようにそう呟く。
その視線を左手に感じて、私はハッとして薬指の指輪を右手で隠した。
私の態度に、中谷さんが苦笑する。


「……旦那さん、沢木さんの仕事に理解あるんだね」


そう言われて、私はおずおずと顔を上げた。


きっと響さんが結婚したことは知ってるだろうと思う。
でもその相手が私だってことまでは、気付いていないみたいだ。


「沢木さんって、いくつ?」


ココアを息で冷ましながら、中谷さんが私にそう問い掛けた。
二十五歳です、と答えると、中谷さんは目を丸くした。


「早いねえ~……って、そうでもないか。私が遅いのか」

「い、いえ、そんなこと……」


何をどう取り繕っていいのかわからず、私はそんな曖昧な返事しか出来ない。
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