ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
中谷さんは目を細めて私を見つめた後、フッと息をついて笑った。


「でも……大体その位が、最初の結婚を意識するタイミングよね」

「え……?」

「そこで幸せを掴めたのが沢木さん。掴めなかったのが、私。……結婚考えられる男と次いつ出逢うか、わからないって言うのに」


どことなく自嘲混じりの声に、ドクンと胸が騒いだ。


中谷さんは私のそんな様子には気付かず、あのさ、と明るく顔を上げた。


「機会があったら聞きたいって思ってたんだけど……。ああいう座談会のメンバーって、どういう基準で選んでるの?」

「あ。……えっと……」


話がいきなり仕事に戻って、私にもいくらか反応しやすい話題になる。
それにホッとして、私も口を開いた。


「あの企画は、若手から中堅に飛び立つ世代の……つまり、新米役職者世代をターゲットにしてるんです」

「ふ~ん?」

「だから、必然的にアラサー世代になるんですが……。仕事以外でも、いろいろ転機が訪れる年代ですよね?
仕事だけじゃなく、プライベートの充実をどう図っているのか……話してもらいたいのは、そういうとこなんです」


元々の企画が香川主任の物だから、そういうコンセプトになった。
それを私は中谷さんに説明する。


中谷さんは頬杖をついて、ちょっと意地悪く私を見つめた。


「……そういう企画だからこそ、沢木さんみたいな人がメンバーに選ばれるべきなんじゃないかな」

「……え?」


戸惑って真っ直ぐ見つめ返すと、中谷さんは肩を竦めた。
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