ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
頬杖をついてどこかぼんやりと呟く中谷さんの心に、今、響さんがいる。
そう思ったら、どうしようもなく胸がズキズキと痛んだ。


「だからね。そういうタイミングをちゃんとモノにした。それだけでも私は、沢木さんを尊敬出来るのよね」

「……そんな」


そんな風に言ってもらえる人間じゃない。


私はただ……。ただ……。


俯いて黙り込んだ私に、中谷さんが小さな息を吐く。
そして、そろそろ行こっか、と、カップをトレーに戻した。


「旦那様、待ってると悪いから」


私に向けられる笑顔が、最初と違ってちょっと曇っているように思えたから、私は何も言い返せなかった。


中谷さんが響さんと別れたのは、ただタイミングが合わなかったから。
求めた時に、結婚に行き着かなかったから。


それが理由だというならば……。


二人が別れたのは、心の問題じゃない。


そう思ったら、それがズシッと胸に重くのしかかったような気がした。
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