ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
テーブルの上のビールのジョッキをグッと傾けてから、通り掛かった店員さんに次のドリンクを注文する。


「ピッチ早いな、大丈夫?」


苦笑を浮かべた清水さんが、自分も二杯目のビールを頼んだ。
その声を聞きながら、私はテーブルに肘をついて、自分の頬を軽く叩いた。
少し、熱を帯びて熱い。


中谷さんは、きっと今でも響さんを忘れずにいる。
それに気付いてしまったから、清水さんに言われた言葉が気になって気になって仕方なくなって……。


この数日、以前の私に舞い戻ったかのような凡ミスの繰り返しだった。
私の様子に、篠沢課長も香川主任も内心きっと穏やかではないはず。


座談会はまで十日ほどしかないのに、何よりも自分自身が一番不安で仕方ない。


悩んだ挙句、週末の今日、私は清水さんを飲みに誘った。
響さんに別の予定があることを知っていたから。


私の思考を読み切って、清水さんは響さんには内緒で来てくれた。


私が聞きたいことも、きっと全部お見通しだったはず。
それでも、お酒の力を借りてグイグイ攻め込む私に驚いたのか、さっきからずっと煮え切らない態度のまま。


「萌ちゃん。気になるなら、倉西に直接聞くべきだと思うよ、俺は」


店員さんが届けてくれた新しいビールのジョッキを持って、清水さんは静かにそう言った。
私は、グレープフルーツサワーのマドラーをグルグルと掻き回す。
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