ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「俺が萌ちゃんに話したって知ったら、倉西、絶対激怒するし」

「清水さんから聞いたなんて、話しません」

「いや、バレるだろ。絶対」


清水さんは、きっと巻き込まれるのが面倒だと思ってるんだろう。
あの手この手で私を宥めすかすけど、私は追及の手を緩めない。


「清水さんのあの言い方……響さんにとって結構マジな彼女だった、ってことですよね?」


並々とサワーの入ったグラスを両手で持って、私はジトッと清水さんを睨んだ。
清水さんはゴクゴクと何口か一気にビールを飲んで、フウッと溜め息をつく。


「……三年前まで、付き合ってたんだよ、あの二人」


ボソッと諦めたように呟く清水さんの声に、私は身を乗り出して耳を傾けた。


「倉西ってさ。セフレが数人いるとか噂立てられてるけど、そういう訳じゃないんだよ。
いくらなんでも、付き合ってる女がいる時に、他に手を出したりはしなかった。
……まあ、学生時代からとっかえひっかえしてて、付き合ってる期間が短過ぎて……短期間で複数って噂になるのは自業自得なんだけど」

「そ、そうなんですか……?」

「自分の嫁にも信じらないとか、超笑える。アイツも不幸だな。まあ、いい気味だけど」


からかうように笑われて、私は慌てて唇をキュッと結んだ。


「……中谷は、俺が知ってる限り、一番長く付き合ってた女だよ。
入行した後、一ヵ月の宿泊研修で意気投合して。三年前……二十五歳まで付き合ってた」


それを聞いて、胸がズキンと痛んだ。
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