ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「おはよう」


その途端、掛けられる声。
一瞬ビクッと足を止めると、ソファに身体を埋めるように座っていた響さんが、チラッと私に視線を向けた。


「お、おはようごさいますっ……」


慌ててシャキッと背筋を伸ばした。


そうだ。今日は土曜日。
響さんが朝から寛いでいても当然だ。


掃除、洗濯……と、やるべきことを頭に思い浮かべながら顔を洗いに洗面所に向かう。
バスルームの中にある洗濯機は、もう稼働している音を自己主張している。


ああ、また響さんがやってくれた……そう自己嫌悪に陥りながら顔を洗って、私はそっとリビングに戻った。


「あの……」


躊躇いながら呼び掛けると、響さんは静かに私を振り返った。


「……また、響さんに洗濯してもらっちゃって、すみません……」


消え入りそうな声で謝る私に、響さんは黙ったままで深い溜め息をついた。


「謝って欲しいのは、そんなことじゃない」


返って来た声が想像以上に不機嫌だったから、私はビクッとその場に立ち尽くした。


「ご、ごめんなさいっ……」

「だから、そうじゃない。……萌、何も覚えてないのか?」

「え?」


冷たい声に、私は恐る恐る顔を上げた。
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