ウェディングロマンス～誓いのキスはふたりきりで～
『君は恋に落ちたんだ』


昨夜清水さんに意地悪く言われた言葉が、予期せず胸を過った。
ドクン……と大きく鼓動がリズムを狂わせる。


「違う、そんなんじゃない！！」


反射的に叫んだ。


どうしようもなく落ち着かなくて、私はその場にスクッと立ち上がった。
勢いよく顔を上げると、ツッと一筋、目尻から涙が零れた。
それを手の甲でグッと拭い去って、私は自分の心から響さんを追い払うように、ブンブンと首を横に振った。


そうだ、買い物に行こう。


響さんが食べてくれなくても、何を作るか考えながら買い物する。
出来上がりを想像して楽しみながら料理する。


そうだ、それでいい。
このマンションで生活を始めた時、それが当たり前に私の仕事だって思ってた。


私は財布を片手に、マンションを飛び出した。
ただひたすら、夕食のことだけを考える。


そうしていれば、響さんのことを考えずに済む。
余計なことに頭を悩ませなくて済む。


そうやって、掻き乱れる心を必死に落ち着かせようとした。




そしてその日――。


響さんが帰って来たのは、私がベッドに入った後のことだった。
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