ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「話の内容は萌に聞けって言われた」

「……私も清水さんに、直接響さんに聞けって言われました」

「やっぱり、聞きたかったのは俺のことか」

「……あ……」


ついつられて白状してしまったことに気づいて、私は慌ててギュッと唇を結んだ。
バツの悪い思いで俯く。


その後の反応を待つかのように、響さんが私の横顔を見つめているのがわかる。
私はその瞳から逃げるように、抱え込んだ膝に額を載せて、それ以上は何も言わずに黙っていた。


探るような沈黙が続いて、最後は焦れたように響さんが小さな溜め息をついた。


「萌。清水の言う通り、俺のことなら、直接俺に聞け」


呆れたような声でそう言って、響さんはソファを軋ませて立ち上がった。
それを気配で感じて、私は恐る恐る顔を上げる。


響さんは私を肩越しに見下ろしていた。
正面から一度視線がぶつかる。


「……ごめんなさい」


さっきは遮られてしまった言葉を、今度は小さな声で響さんに伝えた。
響さんは軽く肩を竦めて、一言、俺もごめん、と呟いた。


「……え?」


どうして響さんが謝るの?


予想外の言葉に困惑して何度か瞬いた私の前で、響さんは大きくリビングを見渡した。


「……あのさ、萌。俺は頑張って立派な嫁になって欲しいなんて思ってない」


そう言われて、一瞬身体が強張るのを感じた。
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