ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
――……
お昼に通用口で待ち合わせた美砂子が、萌!と私を呼びながら駆け寄ってきた。
軽く手を振って合図しながら、笑い掛けて見せると、美砂子は私の隣で立ち止まった。
「お腹空いたね。今日はどこに行こうか」
足が向かう先は、本店ビルからほど近いオフィスビル。
レストランフロアにあるお店の名前を、いくつか思い描きながら歩き出す私の耳元に、美砂子は内緒話するみたいに顔を寄せた。
そして、コソッと短く呟く。
「わかったよ、例のこと」
その言葉に、一瞬身体を強張らせた。
そして、慌てて美砂子を振り仰ぐ。
「早っ……。もう?」
驚いて目を丸くすると、美砂子はスッと背筋を正して、真っ直ぐ前を向いた。
「調べるまでもない有名な話だった。……ただ、その関係者に関しては、銀行全体で緘口令が敷かれてる」
「え……?」
「つまり、それだけ大きな『事件』だったってことよ」
ちょっと険しい表情で早口で呟く美砂子の横顔を眺めながら、私は無意識にゴクッと息を飲み込んだ。
緘口令が敷かれるような事件。
それを一般的には『不祥事』と呼ぶ。
私が美砂子に依頼した『調査』の答えは、思いの外大きくて深刻な雰囲気を纏っていた。
お昼に通用口で待ち合わせた美砂子が、萌!と私を呼びながら駆け寄ってきた。
軽く手を振って合図しながら、笑い掛けて見せると、美砂子は私の隣で立ち止まった。
「お腹空いたね。今日はどこに行こうか」
足が向かう先は、本店ビルからほど近いオフィスビル。
レストランフロアにあるお店の名前を、いくつか思い描きながら歩き出す私の耳元に、美砂子は内緒話するみたいに顔を寄せた。
そして、コソッと短く呟く。
「わかったよ、例のこと」
その言葉に、一瞬身体を強張らせた。
そして、慌てて美砂子を振り仰ぐ。
「早っ……。もう?」
驚いて目を丸くすると、美砂子はスッと背筋を正して、真っ直ぐ前を向いた。
「調べるまでもない有名な話だった。……ただ、その関係者に関しては、銀行全体で緘口令が敷かれてる」
「え……?」
「つまり、それだけ大きな『事件』だったってことよ」
ちょっと険しい表情で早口で呟く美砂子の横顔を眺めながら、私は無意識にゴクッと息を飲み込んだ。
緘口令が敷かれるような事件。
それを一般的には『不祥事』と呼ぶ。
私が美砂子に依頼した『調査』の答えは、思いの外大きくて深刻な雰囲気を纏っていた。