ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
どうして……。


中谷さんの言葉に、私の方が感情的になってる。
酷い言葉をぶつけられた張本人の響さんが、どうしてそんな簡単に言えるんだろう。


どうして、と頭の中で繰り返して、私はキュッと唇を噛んだ。
そして、なんとか気持ちを落ち着かせようと、一度大きく深呼吸する。


「……響さん、今でも中谷さんのこと好きなんでしょう?」

「……え?」


私の一言に、響さんが戸惑ったような声を漏らした。


「清水さんから、響さんが中谷さんと別れた時のこと聞きました。それを聞いて、私わかっちゃったんです。
……響さんが中谷さんに返した答えは、本当は約束のつもりだったって」


一気に早口で言い切った私に、背後で響さんが一瞬息を飲んだ。
それでも。


「……何言ってるんだ」


返って来るのは、感情を抑えた冷静な声。


「萌、ちょっと落ち着け」


続く一言に、心の奥底で何かがブツッと切れた音を聞いた。


どうしてそんなに落ち着いてられるの?
どうしてそんなことを私に言えるの?


「中谷さんを忘れてないんでしょう!? だって響さん、私に誓いのキスも出来なかったじゃないですかっ……!!」

「っ……」


息を飲む響さんの反応が、態度よりも仕草よりも、私に対する答えだと思った。
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