ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
定時を過ぎて手元が空いてから、私は反省文に着手した。


反省文を書くほどの失敗を、今までしたことがない。
書式も書き方もわからなくて、一から調べながら書き始めて、今まで自分がどれだけぬるま湯にいたかってことを痛感した。


そして……。心に過るのは、中谷さんの顔だった。


今の私と同じ年で、大変なミスを背負うことになった。
全く同じ気持ちになるには、私のミスなんてまだまだ可愛い物かもしれない。
それでも、深く沈んだ気持ちが、今の私にはよくわかる。


自分勝手な感情に任せて中谷さんを詰ってしまった。
私の気持ちが中谷さんにわからないように、私だってその時の中谷さんの気持ちを全部汲み取ることなんか出来ない。


それでも、ほんのちょっとでも寄り添える気がした。
その思いを追ってみたら、どうしようもないくらい切ない気分に陥った。


きっと、物凄く傷付いた。
助けを求めた先で救いの手は交わされて、どん底の気分だったに違いない。


今までは響さんの気持ちばかり考えて、中谷さんに寄り添えなかった。
でも今の私なら。
中谷さんの気持ちもいくらかわかる。


「……っ……」


突如鼻の奥がツンとして、ジワッと涙が浮かんで来た。
それを必死に堪えながら、私は身体を硬直させてただ俯く。
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