ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
求めた物に手が届かない辛さ。
願いを断ち切られる苦しさ。


私と一緒だ、と、小さく震える声で呟いた。


響さんに愛された中谷さんが羨ましくて。
響さんに愛されない自分が悲しくて。


理性を失って子供みたいに感情を爆発させて。
せっかく頑張って来た仕事も目茶目茶にしてしまった。


パソコンに映し出された『反省文』のフォーマットが、私に追い打ちを掛ける。
だからこそ、逆に笑えて来る。


私、バカみたい。
なんであんなこと言ってしまったんだろう、と、冷静な自分が呆れ果ててる。


醜い嫉妬、独占欲、簡単に失える理性。
溢れ返って治まらない欲情。


『君は恋に落ちたんだ』


その言葉を、今は否定する術もない。
だって、こんな愚かな自分を、他になんて例えればいいのかわからない。


こんなに心が揺れるのも、こんなに苦しくて堪らないのも、こんなに切なくて涙が出るのも……。


全部全部、私が響さんのことをすごくすごく好きだから。


初めて自覚した想いは、素直に心にストンと落ちて来た。


ああ、私……。


響さんのこと、好きなんだ。
好きで好きで堪らなくて、だから同じように想いを返して欲しいって思う。
我儘で自分勝手な気持ちでも、胸を張れる。


恋に落ちた……。


自覚して、絶望的な気分になった。


それでも……得体のしれない自分の心にウジウジ悩んでいるよりはずっといい。
届かない恋心に苦しむことになっても、今の私の方がずっと好きだと思えた。


ここから片想いが始まるなんて……。
あまりに間抜けで、むしろ私らしい。
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