ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
唇を噛み締めて言葉を切る。
響さんは黙ったまま私をジッと見つめて、その視線で次の言葉を促している。


「私と響さんの間に恋はないままで……だから、私、響さんがどんな役割を求めてるのかわからなくて。
せめて、立派な奥様になろうって、ずっとそう思ってました。
だから、結婚式の誓いのキスのことも、気にしないようしてたんです」


言ってるうちに、感情が溢れ返って来た。


「……だけど、本当は、すごく寂しかった……」


さっきよりもずっと声が震える。


響さんは同じ姿勢のまま、私を見上げている。


「響さんにドキドキする度に、一生の愛を誓ってもらえなかったこと思い出して、自信持てなくて……。
響さんのそばにいると切なくて、響さんの恋人だった中谷さんに嫉妬して、そんな自分が嫌で嫌で堪らなくて……」


言いながら、言葉に詰まった。


「……だって、私……響さんのこと……」


乾いた喉に声が張り付いていくみたいに、私の声はひどく聞き取りにくくなって行く。
伝えたい言葉が思うように声にならなくて、とても歯痒くてじれったい。


私をジッと見つめていた響さんが、ギシッとソファを軋ませてしっかりと身体を起こした。
そして、手を伸ばして私の腕をグッと掴むと、そのまま強引に引き寄せた。


「ひゃっ……」


身体が一回転するような感覚。
一瞬ギュッと目を閉じて、恐る恐る目を開けると、私はソファに引っ張りこまれていた。
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