ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「ああ、それ聞いた。……って言うか。萌が魔性って……」


思い出し笑いをする響さんの脇腹をシレッとつねった。
痛っ、と、響さんが軽く私を睨む。


「他人事みたいに笑わないで下さい」

「他人事なんて思ってない。……って言うか、人の結婚を勝手にオカルトにするなって抗議したいとこだよな」


腕組みして顔をしかめて見せるけど、響さんが笑いを堪えてるのはわかる。


ムッとして響さんを睨み上げると、お義父様が、


「なんだ、なんだ?」


と身を乗り出して来た。


「名誉棄損か? 侮辱罪か? 萌ちゃん、困ってるなら、いつでも私に相談しなさい」


本気で罪状認定しようとするお義父様に、私は慌てて大きく首を横に振った。


「だ、大丈夫ですっ! そこまで困ってませんからっ……」


そんな私に、お義母様はふふっと笑い掛けた。


「……でもこの通りの言葉じゃなくても、ニュアンスはこんな感じだったんでしょ? なあに? 響は萌ちゃんにほっとかれて不満なの?」


意地悪にストレートな聞き方をされて、私の方が焦る。


「え……? 私、そんなこと全然っ……!」

「ああ、俺は別に不満なんかないって。だから、もうその記事のことはいいだろ。……っつーか、俺、もう二度と広報部の取材受けない」

「えっ!? そんな、響さんっ!」


突然のシャットアウトに慌てて声を上げると、向かい側の二人が面白そうに声を上げて笑い出した。
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