ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「……ふふ。このテーブル見れば、萌ちゃんが響を放置して仕事ばかりしてるなんて思わないわよ。ねえ? お父さん?」

「そうだな。なんせ響の好物ばかりだ」


お義父様は肩を揺らしてそう言って、真ん中のお皿からハンバーグを箸で取った。
取り皿の上で切り分けて、小さな塊を口に運ぶ。
そして、ん、と唇をすぼめた。


「美味いぞ。……ほら、響も不貞腐れてないで食え」


軽く箸を動かして、お義父様が響さんを促した。


「なんで俺が親父に指示されなきゃいけないんだよ」


ブツブツ文句を言いながら、響さんもハンバーグを口にした。
そしてモグモグと口を動かしてゴクンと飲み込むと、


「……美味い」


ボソッと短く呟いた。


「あ、ありがとうございます」


なんだか照れ臭い気分で俯くと、響さんは他のお皿にも箸を伸ばした。
そして、ポテトサラダを口に運びながら、チラッと私に横目を向ける。


「……っていうか、言ったことあったっけ? 俺が好きな食べ物」


首を傾げて記憶を辿る響さんに、私は首を横に振った。


「いえ。聞いても答えてくれなかったです。響さん」

「なのによくわかったな」


ちょっと丸くした不思議そうな瞳が私に向けられる。
私は笑い返しながら、だって、と答えた。
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