ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「社食で会った時とか、外食先で選ぶ物とか見てればわかります。それに、普段の響さんのこととかも、全部」

「え?」

「響さんって、意外と変なとこで子供なんですよね」


サラッとそう言うと、響さんが軽く噎せた。
私の言葉に、お義母様が反応して、楽しそうな声を上げる。


「そう、そうなのよ、萌ちゃん! 響はそれなりにいい大人に成長してくれたんだけど、感覚に子供が残っちゃったのよね。特に味覚なんか本当に典型的に」

「そうですよね、お義母様っ!
ハンバーグとかオムライスとか唐揚げとか。パスタもミートソースかナポリタンだし、子供が挙げる好物の典型ばっかり!」


お義母様の言葉に激しく同意して思わず腰を浮かせてそう言い募ると、お義母様も嬉しそうに、そうそう!と頷いてくれた。


「料理の腕、奮い甲斐のない男なのよね~。ファミレスのお子様ランチが一番喜ぶなんて」

「あ、私、休日ランチで作ってあげますね、響さん! 旗も立ててあげます」


女二人で、響さんをネタにきゃあきゃあと盛り上がる。


「いらねーよっ! 旗なんか!!」


それを横目にウンザリしたように箸を動かしていた響さんが、顔を真っ赤にしてそう怒鳴った。
そして、小さな溜め息をつく。


「……っつーか、俺の味覚をネタに、なんでそこまで騒げるんだよ」


小さなぼやきに反応したのはお義父様だ。


「いいじゃないか、響。萌ちゃんと母さんの繋がりの間にいるのはお前なんだから。
嫁と姑の仲がいいのは、かなり気楽でいいもんだぞ。板挟みにならなくて済む」

「……俺はラッキーだったって思うことにするよ」


なんだか、響さん達は男同士の話で盛り上がっているらしい。


その日の家族での食事会は、いつまでも会話と笑いが途絶えなかった。
たくさん用意したつもりのお料理もすっかり空になった。
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