ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
歯磨きを終えて、洗面台の前からパウダールームに移動する。
胸の高さの台に化粧ポーチを置いてファンデーションを取り出しながら、真っ直ぐ鏡に向き合う。
そこに映るのは、これと言った特徴のない、せいぜい十人並みの顔をした私だった。


くせっ毛で猫っ毛。
放っておいてもフワフワしてしまう髪は、大体いつも肩に掛かる程度のミディアムヘア。
大人っぽいサラサラストレートに憧れても、髪質的に無理なので出来ない。


それが生まれ持った私のルックス。
せめて服装だけでも大人っぽくビシッと決めたいのに似合わなくて、私の定番は膝より少し短い丈のフレアスカート。


なんて言うか、……自分で言うのも悲しいけど、地味。
こんな私が響さんに似合う訳が無い。それはもう自分でも認める。


ファンデーションを軽く頬に叩きながら、鏡の中の自分を見つめて、肩を落として溜め息をついた。


一度だけ、響さんが『彼女』と歩いているのを見たことがあった。
この会社……メガバンクと言われる一流企業に入行して直ぐだから、三年前のこと。


響さんは有名人だから、彼が所属する営業第一部とは仕事で全く関連ない広報部勤務の私でも、その噂は聞いていた。
何よりも、整ったルックスに目を奪われてしまった。
その時隣を歩いていたのは、私と全く正反対の勝気な印象の美人で、とにかく大人っぽかったのを覚えている。
< 21 / 224 >

この作品をシェア

pagetop