ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
あの時の響さんは、今の私と同じ二十五歳だったはず。
あの美人も同じくらいじゃないかと思うけど……。


頭の中であの時の彼女の姿を再現して、もう一度鏡を見つめる。
そうして、どう引っくり返っても、ああはなれない自分を認めざるを得ない。
私はまたガックリと肩を落とした。


「あ、ほら。あの子……」


背中合わせの洗面台の方から、辺りを憚るようなヒソヒソ声が耳に届いた。
なんとなく鏡越しに背後に目を遣ると、目が合った女性が慌てたように目を逸らした。


「地味な子だよね。一年前にうちの園田先輩が倉西さんと付き合ってた時は、あんな美人じゃ仕方ないって納得出来たもんだけど。
倉西さんでも、結婚となると見た目はどうでもいいのかしらね」


目が合った女性とは別の、パンツスーツの女性が声を潜めているけれど、ヒソヒソ声ってどうしてこんなに良く聞こえてしまうんだろう。


「バカ、聞こえる。気付かれてるよっ」


こっちを気にしながら止める女性に肩を竦めて、私はポーチを手に取ると俯きがちにトイレから飛び出した。
< 22 / 224 >

この作品をシェア

pagetop