ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「でも……私、男の人は何を貰ったら喜ぶかわかんないし」


困ってそう言いながら俯くと、


「親父は、『可愛い娘』からなら何だって喜ぶよ。携帯ストラップでも、絵ハガキでもホラ貝でも」


日本の温泉街のお土産屋さんでも良く見掛けそうな品物ばかりを並べる響さんに、私はつい小さく吹き出した。
お義父様も面白そうにクスクス笑っている。


「まあ、次回に期待するとしよう。ああ、響、ありがとうな」

「ついでにお礼、なら別にいらない」

「拗ねるな、バカ息子。……ところで、二人ともあまり日焼けしてないな」


身体を屈めて上目の視線。探るように低いお義父様の声。
私の隣でメニューを開く響さんの手が、一瞬ピタッと止まった。


「ニューカレドニアだろ? 海には行かなかったのか?」


不思議そうに尋ねるお義父様の視線が、真っ直ぐ私を捉える。


「え、えっと……」


私は一瞬口籠りながら、救いを求めて響さんを窺い見た。


「行ったよ、もちろん。でも、日焼け止め塗りたくったから。最近の日焼け止めって凄いよな」

「萌ちゃんならともかく、響、お前男のくせにそんなこと気にしてるのか」

「男でも紫外線に晒されるのは避けたいだろ」


涼しい表情を全く変えずに、響さんはサラッと返事を返す。
そして軽く手を上げて店員を呼んだ。


「この店なら、親父オススメのプリフィクスだろ? オーダー、しちゃっていい?」


軽く断るだけで、響さんはあっさりと三人分のオーダーを済ませると、グラスに注がれた水を口に含んだ。
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