ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「もしかして、結構ラブラブなのかな。それにしては、行内じゃ見かけないよね、一緒にいるの」

「仕事で接点ないからじゃない? でももしあったら、意外と仲いいって思うのかな?
……やだあ! 倉西さんがあんな子とラブラブなんてっ!」


ほんと、人のことなのにどうしてそんなに盛り上がれるんだろう。
給湯室の中の女性社員は、接戦のサッカーの試合でも観ているかのように白熱している。


少し呆れることが出来る程度には、心の余裕を保てる自分がすごいと思う。


それにしても……こういうのって、女の私の周りだから、こんなに堂々と噂が蔓延するのかな。
それなら、私と結婚したことで今までとは違う注目を浴びていることを、響さんは知らずにいるかもしれない。


そう考えながら、いやいや、と自分で否定した。


響さんの耳にも入ってるからこそ、私と外を歩くのを避けたんだろう。


響さんと噂のことを話したことはないけど。
耳触りな噂を断つには、ネタを提供しなきゃいいんだから。


「ほんと、どんな手使って倉西さんを落としたんだろうね、あの子」


給湯室の中の話題は、七不思議の解明に移って行く。


それを聞きながら、私は左手の腕時計を見遣った。


時間を置いて出直したいとこだけど、お茶淹れなきゃいけない。
あんまりのんびりしてる訳にも行かない。どうしよう。


なんだかジリジリした気分になってきた時、背後でフフッと含んだ小さな笑い声が聞こえた。
ハッとして振り返るとほぼ同時に。


「これ持ってて」


声と同時に、いきなり目の前に何かがふっと落ちて来た。
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