ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
昨夜は響さんの方が帰宅時間遅かった。
どう考えても、私の方が先に起きて、家事を全部こなしてなきゃいけなかったのに。


「何謝ってんだよ」


起き抜けで挨拶もせずにいきなり謝る私に、響さんは不審そうに首を傾げた。
それを横目で見遣りながら、私はまず洗濯、と洗面所に飛び込む。


そして、がっくりとこうべを垂れた。
全自動の洗濯機は、既に回っていた。
しかも、あと十分もすれば仕上がる状態。
響さんがやってくれたに決まってる。


「おい、萌?」


洗面所にやって来た響さんに怪訝そうな声で呼ばれて、私はバッと頭を下げた。


「すみません! すみません!!」

「は? なんで二連発?」

「私、響さんの奥様なのにっ! 寝坊して洗濯までしてもらって、ごめんなさい!!」


凄い剣幕で捲し立てるように謝る私に、は?と響さんの乾いた声が届いた。
それだけで自己嫌悪が深まって、どこかに消えたくなった。


立派な奥様……が聞いて呆れる。
なんかもう、いろんな意味で情けなくて、ジワッと涙が込み上げて来た。


そんな私の頭に、ポンと響さんの手が下りて来る。


「何言ってんだよ。別に俺は、家事全部萌にやらせようなんて思ってないぞ」

「でもっ……!」

「萌も働いてるんだから。俺だって自分で出来ることは自分でするし」


涼しい声だからこそ、グッと胸に詰まる。
立派な奥様になれない私じゃ、響さんの傍にいる意味すらないのに。
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