ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「……すみませんでした。あの、この先は私がやります。だから響さんはゆっくりしてて下さい」


涙を飲み込んで俯きながら、洗面所から追い出すようにグイグイと背を押す私に、響さんは戸惑ったように足を止めた。


「萌?」

「それが終わったら掃除して、お昼ご飯準備して……」

「……萌。ちょっと待てって」


この後の段取りをしながら、この失敗の挽回を必死に考える私の腕を、響さんがグッと掴み上げた。
そのまま覗き込まれて、ドキッとしながら口を閉じる。


「……なんだ、お前。泣いてるのか?」

「っ……」


真っ赤になった目の理由を呆気なく言い当てられて、私は反射的に顔を背けた。
そんな私に、響さんは小さな溜め息をつく。


「昨夜、飲んで来たんだろ? せっかくの休みなんだから、お前もゆっくりしてればいい」

「だ、大丈夫です!」


私の腕を離して背を向ける響さんに、私は必死でそう言い募った。


「響さんの方こそ、ゆっくりしてて下さい」

「……あのさ」


呆れたような声で一言呟いて、響さんは再び私を振り返った。
そして、腰に手を当てて、一瞬考えるような間を置いてから、


「大丈夫だって言うなら、ちょっと着替えて来い」

「……は?」
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