ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
再び足元に目線を落とすと、響さんの溜め息が聞こえた。


「やっぱりそこか。気にしてるのは」


どこか呆れたような声。


「ドライブなら、そこまで気にならないだろ」

「え?」


思わず顔を上げて見つめると、響さんは私から目を逸らして、ドアのバーロックを外した。


「ほら、早くしろ。腹減ったから適当なとこでブランチしよう」


ちょっとぶっきら棒な言い方に導かれるように、私は固まっていた足を一歩踏み出した。
そして靴を履いておずおずと響さんを見上げる。


響さんはドアを大きく開け放して、私を廊下に誘う。
私が外に出ると、家の鍵は響さんがかけてくれた。
そして、私の横をすり抜けて、先にエレベーターホールに向かっていく。


「でも、響さん……」


慌ててその後を追いながら、まだ躊躇う気持ちが拭えない。


「なんだよ。まだなんか問題あるのか?」


響さんは振り返らずに、どこか焦れたような声で尋ねてくる。


「だって、ドライブって……」

「は? 別にお前、車酔いしたりしないだろ?」

「しないですけど、……でも」

「だからなんだよ」

「……なんか、デートみたいでいけない気がして」
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