ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
キュッと音を立てて、長い腕がシャワーのコックを捻った。
響いていたシャワーの音がピタッと止まる。


フウッと息を吐く唇。
濡れた髪を掻き上げながら、喉を仰け反らせて顔を上向けて。
美し過ぎる彫像がゆっくりと目を開く。
そして、次の瞬間。


「なっ……。萌っ……!?」


響さんの声が浴室内に反響した。


髪からも肌からも水滴を床に落としながら、響さんが大きく見開いた瞳で私を見つめている。


その瞳が、私の行動と同じように、上から下にゆっくりと動く。


私の頭から顔、肩から胸へと……。
まるでなぞるように降りて行って。


「……き」


お互いの目線が、同じように足元に落ちた時。
私はやっと、この状況を理解した。


「……きゃああああっ!!」


張り裂けんばかりの声を上げて、バタンと音を立ててドアを閉めた。


頭ん中真っ白。
心臓だけがバクバクとフル回転してる。


何にも考えられないまま。
籠に置いた着替えをスポッと頭から被って、私はバスルームから飛び出して自分の部屋に逃げ込んだ。
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