ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「……あのなあ。どっちかって言うとこの件で被害者は俺の方だ」


呆れたような声が聞こえる。


そうかもしれない。
そうかもしれないけど、私は響さんみたいに平然としてなんかいられない。


「それに、見られたのはお互い様だ」


その言葉を聞いて、私の中で何かがブチッと切れた。


「ひ、響さんと一緒にしないで下さい!!」


声を上げながら、勢い良く布団を跳ねのけて顔を上げた。
響さんが目を丸くして私を見下ろしている。


「わ、私の方は湯気で曇ってたし何にも見てません!!」


真っ赤な顔を背けながら反論すると、は?と短い声が返ってきた。


「嘘つけ。ガン見してたくせに」

「~~っ、だから、目には映ってませんっ!!」

「どういう屁理屈だよ。それ言ったら、俺だって一瞬だったし、脳内消去してやるから、安心しろ」

「脳内消去ってっ……!」


それも酷っ!と叫びながら、私はベッドにペタンと座ったまま響さんを見上げて睨んだ。


そして、悔し紛れに枕を掴んで、思いっ切り響さんにぶつけた。
予想外の反撃だったのか、響さんの顔に正面から命中する。
ブッと響さんが声を上げた。


「萌っ!!」


さすがに苛立った響さんが私の腕をグッと掴んだ。
その腕を振り切れないまま、私は顔を俯ける。
< 87 / 224 >

この作品をシェア

pagetop