ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「……恥ずかしくて、死にそう……」


半泣きになって呟くと、頭上で響さんの小さな溜め息が聞こえた。


「俺だって、同じ気持ちなんだけど」

「嘘ばっかり!」


思わず、涙ぐんだ目で響さんを見上げた。
響さんは私の腕を離して、フッと苦笑してからベッドの端に腰を下ろした。


「なんで嘘? 俺だって無防備な状態であんなご対面、恥ずかしいに決まってるだろ」

「う……」


無防備って言葉が胸に突き刺さる。


先に冷静になった響さんの言葉通り、確かにあの状況で悪いのは私の方だ。


「……ごめんなさい」


シュンと俯いたままで呟くと、響さんはハッと息を吐いて笑った。


「また、謝る癖か」

「私、ボーッとしてて。お見苦しいもの、お見せしました。脳内消去して下さい」

「なんだよ、それ」


乾いた笑い声を上げて、響さんは私に背を向けて肩を竦めた。


「……だって……」


呟きながら、私は中谷さんの姿を思い起こしてしまう。
< 88 / 224 >

この作品をシェア

pagetop