幕末を一滴
そして出会い

逃走

はっ、はっ、はっ、はっ……っ

元治元年、京都―。

はあっ、はあっ、はあっ、はあ……。
息が切れ、喉が渇いてひりひりと痛む。
もう、何日食べ物を口にしていないだろう…。
来月、私と祝言をあげる予定のあの人が亡くなったと聞いたのは、先週のことだった。

「御家人の武士程度では、君を幸せに出来ない。せめて一廉の武士として、誰からも認められるくらいにならなければ」

あの人は京都見廻組に参加し、動乱の京都に上った。そして――


報せを聞いて居ても立ってもいられなかった。
もう、彼はどこにもいない……分かっているのに京都まで来てしまった。
涙で視界がぐにゃりと歪む。
「うぇぇっ……っふ…っひっ…っく……」
揺れる視界。途切れる息。

―私死ぬのかな?
私―
それ以上考えることはできなかった。
足元がぐらりと揺れたような気がして、視界の天地が逆転した―

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