笑顔、こもれび。
笑顔、こもれび。
「西森。今日からお前の勉強を見てくれることになった、夏目だ。しっかり教われよー」
九月中頃の放課後、先生のにっこり顔とともに紹介されたのは、隣のクラスの無愛想くんだった。
廊下の真ん中、彼と先生と向き合った私は、戸惑っている。
この前の夏休み明けのテストで、赤点だらけの血祭りをあげてしまって。
私に勉強を教えてくれる生徒を紹介してやる、と先生が言うから、私は心優しい女生徒を期待していたのだ。
まさか、彼だなんて。
先生の隣でこちらをじっと見つめてくる、夏目孝弘。
黒ブチメガネをかけたその顔は無表情で、感情がいまいち読み取れない。
私が「え、よ、ヨロシクオネガイシマス」と片言で頭を下げたところで、先生は夏目くんの肩を叩くと、「じゃ、よろしくな」という言葉を残して去っていった。
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