笑顔、こもれび。

彼女の方はいつものように本を読んでいて、彼氏はその膝枕で寝ていて。

時折、彼女の手が想い人の髪を撫でる。

それはとても、あたたかな光景だった。


朝木さんは私の言葉に、照れたようにはにかむ。

「あはは、本当?ありがとう」

なんでも朝木さんと彼氏は、小学校時代からの幼馴染みらしい。

まるで、恋愛小説みたいだ。


すると朝木さんは、ふと目を伏せた。


「....けど私、実はもうすぐ、転校するんだ」


思いもよらない言葉に、耳を疑う。

「う、嘘」

「本当だよ。親の転勤で。三週間後、かな」

彼女がそのあと言った地名は、遠く離れた他県だった。あまりに突然で、言葉を失う。

朝木さんはなんでもないみたいにわらう、けど。


「......」


脳裏に、朝木さんとその彼氏、そして窓の外を見つめる夏目くんの姿が、浮かんだ。


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