笑顔、こもれび。
ここで、こんな風に話をして、彼は彼女をすきになっていったのだろう。
そう思うと、私は見ているのが辛かった。
....夏目くん。
きみは今どんな気持ちで、彼女を見つめているの。
*
「....なんか、静かだな。今日」
その日の放課後。
自習室に入って一時間ほど経ったところで、口を開かない私を怪訝に思ったのか、夏目くんから話しかけてきた。
「......」
プリントから顔を上げて、何か言おうと口を開いてみる。
けど、声が出なかった。
再び口を閉じると、もどかしさばかりが喉の奥をぐるぐると回る。
俯く私の返事を、夏目くんは黙って待ってくれていた。
言いたい。けど、言えない。言ってどうにかなるわけでもない。
そんなこと、わかってるのに。
「....ここが、わかんないんだけど」
アホみたいにヘラリと笑って、プリントを指差す。
夏目くんは「どこ?」と言って、いつものように近づいてきた。