笑顔、こもれび。

ここで、こんな風に話をして、彼は彼女をすきになっていったのだろう。

そう思うと、私は見ているのが辛かった。

....夏目くん。

きみは今どんな気持ちで、彼女を見つめているの。





「....なんか、静かだな。今日」

その日の放課後。

自習室に入って一時間ほど経ったところで、口を開かない私を怪訝に思ったのか、夏目くんから話しかけてきた。

「......」

プリントから顔を上げて、何か言おうと口を開いてみる。

けど、声が出なかった。

再び口を閉じると、もどかしさばかりが喉の奥をぐるぐると回る。

俯く私の返事を、夏目くんは黙って待ってくれていた。

言いたい。けど、言えない。言ってどうにかなるわけでもない。

そんなこと、わかってるのに。


「....ここが、わかんないんだけど」

アホみたいにヘラリと笑って、プリントを指差す。

夏目くんは「どこ?」と言って、いつものように近づいてきた。


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