笑顔、こもれび。
「えっと...これ。ここから、どうするの?」
「ああこれは、公式使って....」
夏目くんが、机に手をついてプリントを覗きこむ。
サラサラの黒髪が、私の頬に当たる。
彼の説明を耳に入れながら、その奥二重の目をちらりと盗み見た。
この瞳が。
......すきなひとを、見つめるとき。
綺麗に色づくことを、私は知っている。
日に日に縮まる距離感に、ドキリとした。
「....西森?」
呼ばれて、ハッとする。
眉を寄せた不機嫌そうな目と、視線がぶつかった。
「聞いてんの?」
「聞いてます聞いてます」
「...何度も言うの面倒くさいから、ちゃんと聞いてて。ただでさえ西森、記憶力カスなんだから」
カスとか言われた。
私はムッとして、「カスじゃない」と言い返す。
「興味があることなら、ちゃんと覚えるもん」
「そりゃ誰だってそうだよ」
夏目くんは呆れた目をして、「やる気の問題だろ」と言った。