笑顔、こもれび。

もしかしたら、誰かに知っていてほしかったのかもしれない。

彼が朝木さんをすきなことは、校内で私しか知らないのかもしれない。

彼がその胸に想いを閉じ込めたまま、日々は過ぎていく。

同時に、朝木さんが学校を去る日も、近づいてきていた。


「ケンカしちゃった」


図書室のカウンターで、朝木さんがそう言って笑ったのは、次の週の火曜日だった。

先々週に借りた本を返しに来て、いつものようにそのまま話していると、彼氏さんの話題になってしまって。

....朝木さんが転校するまで、もうあと一週間だ。

「ケンカって...こんなときに」

「遠距離になるから、つい不安になって。....嫌なこと、言っちゃった」

仕方ないと、思う。怖いのは当たり前だ。

朝木さん達は幼馴染みとして、今までずっと一緒にいたんだから。



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