笑顔、こもれび。

朝木さんは、明らかに無理をしてわらっていた。

「たぶん引っ越したら、滅多に会えないんだよね。...私がいない間に、他にすきな子できたりして」

「...あり得ないよ。ふたりとも、あんなに仲良いのに」

そうは言っても、大した慰めにはならない。

わかっていたけど、こんな言葉しか出てこない自分が情けなかった。

普段どれだけ恋愛小説を読んだって、肝心のこんなときには何の意味も持たないのだ。

すると、私の横に誰かがすっと立った。


「大丈夫だよ」


夏目くんだった。

彼は持っていた本を、朝木さんに手渡す。そういえば彼も先々週、私のすぐあとに借りていたっけ。

「朝木達なら、大丈夫」

夏目くんは、いつも通りの無表情だった。

けど、その瞳はまっすぐに朝木さんへ向けられていて。



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