笑顔、こもれび。
あんなにも純粋に、すきなひとの幸せを願える
ひと、いないよ、夏目くん。
きみはきみ自身で、この物語を動かした。
...きみにとって、いちばんくるしいやり方で。
あの日から夏目くんは、口数が減った。
いや、もとに戻っただけかもしれない。
私と、進んで会話をしようとしなくなった。
理由はわかっていたから、私もしつこく話しかけようとは思わなかった。
けど、納得はしていない。
朝木さんが転校する日、私との時間が終わる日まで。
夏目くんはこのまま何も言わず、時間が過ぎるのを待つのだろう。
そして後からひとりでひっそりと、終わらせる気でいるのだ。
その恋を。閉じ込めた、想いごと。
朝木さんが学校へ来る最後の日の火曜日、私は昼休みに図書室を訪れた。
一言、お別れを言いに。
朝木さんは図書室へ入ってきた私に気づくと、すぐに「西森さん」と慌てた様子で声をかけてきた。