笑顔、こもれび。
「...俺の、好きな作家だ」
細められた目。
彼の指が、本の背表紙に触れる。
やさしく、やさしく、撫でる。
私はその様子を、席に座って見ていた。
「....もう絶版になってて、手に入らないんだって。整理してたら書斎から出てきたから、あげるってさ」
「......」
思い出して、いるのかな。
彼女と話したときのことを。
彼は変化に乏しいその表情を崩すことなく、本を見つめる。
だけど、それは表表紙を開くときまでだった。
「......え」
彼の口から、声が漏れる。表紙を開いた夏目くんは、驚いていた。
「どうしたの...?」
気になって、彼の手元を覗き込む。
そこにあったのは、表紙の後ろに挟まるように置かれている、あの手作りの栞と、一枚のメモ紙だった。