笑顔、こもれび。
「ガーベラ...」
見覚えのあるその桃色の押し花に、思わず呟いていた。
夏目くんが栞を手にとって、見つめる。
栞の下の方には、彼の名前である『TAKAHIRO』と書かれていた。
間違いなく、朝木さんが彼のために作ったもの。
「......」
彼は言葉を失ったまま、折り畳まれたメモ紙を手に取った。
開くとそこには一行だけ、丁寧な字で書かれていた。
《いつも素直に人と向き合う夏目くんを、いつまでも尊敬しています》
.....お礼をしたくて。
そう、彼女は言っていた。
桃色のガーベラの花言葉は、感謝。
夏目くんはしばらくの間、そのメモ紙を見つめていた。
噛み締めるように、刻み込むように、繰り返し読んでいるようだった。
やがて、彼はあのときと同じように、わらった。