笑顔、こもれび。


「...ふは。最後にこんなサプライズ残してくとか...さすが」


目の前で、やさしく静かに、わらう、彼。

大切なものを見つめるその瞳は、わずかに揺れていて。

本を持つ右手は、震えていた。


....夏目、くん。

私は、席を立たずにはいられなかった。

下を向いてわらう夏目くんの目の前に立つと、彼は驚いたように、顔を上げた。

夏目くん、私はずっと、見てたんだよ。

あんなにも切ない想いを抱えて、きみは。

....きみはいつも、すきなひとの前ではわらっていたね。

にじんだ視界の中で、目が合った。



「わらわなくて、いいよ」



声は、やっぱり震えてしまった。夏目くんの瞳が、再び見開かれる。

「わ、らわなくて、いい」

言いながら、私の瞳は、今にも涙がこぼれそうでたまらなかった。


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