笑顔、こもれび。
「...で?」
そんな不安に駆られていたら、突然話しかけられた。
何が「で?」なのかわからず、思わず「え?」と聞き返すと、面倒くさそうな顔をされる。
「赤点って、どの教科を取ったんだよ」
あ、ああ。なるほど。
「えーと...数Ⅱと数Bと生物、です」
「理系ばっかだな」
「うん、国語以外苦手。特に数学」
「頭の回転遅そうだもんな、あんた」
ひどくね、この人。
「...うん。けど私、頑張るから。よろしくお願いします、夏目くん」
せっかく素直に頭を下げたのに、彼の視線は既に文庫本の紙面上にあった。
「ああ、うん。じゃあ、適当に渡されたプリントやって。わかんないとこあったら言って」
え、まさか放置?
次の言葉を待ってみたけど、彼はそれ以上何も言うことなく、本の世界へ潜り込んでいった。