笑顔、こもれび。
「........」
仕方ない。シャーペンを持って、プリントの問題文を追うことにした。
....窓から、夏の気配の残る風が吹いてくる。
早くも不安が的中する中、夏目くんとの時間が始まった。
*
それから私は、毎週火曜と水曜、金曜に、あの自習室で夏目くんに勉強を教えてもらうようになった。
期間は、一ヶ月。次のテストの一週間前までだ。
私が机に向かって一生懸命プリントと戦う中、相変わらず夏目くんは文庫本を片手に涼しい顔をしている。
それでも教えてもらうようになって一週間が経つ頃には、夏目くんが私を『あんた』から『西森』と呼ぶようになったりと、少しだけ親しくなった。
それと、わかったことがひとつ。
彼はときどき文庫本から顔を上げて、窓の外に目をやることがある。
その目はとてもまっすぐで、....普段の彼より、やさしくて。