笑顔、こもれび。

「........」

仕方ない。シャーペンを持って、プリントの問題文を追うことにした。


....窓から、夏の気配の残る風が吹いてくる。

早くも不安が的中する中、夏目くんとの時間が始まった。





それから私は、毎週火曜と水曜、金曜に、あの自習室で夏目くんに勉強を教えてもらうようになった。

期間は、一ヶ月。次のテストの一週間前までだ。


私が机に向かって一生懸命プリントと戦う中、相変わらず夏目くんは文庫本を片手に涼しい顔をしている。

それでも教えてもらうようになって一週間が経つ頃には、夏目くんが私を『あんた』から『西森』と呼ぶようになったりと、少しだけ親しくなった。

それと、わかったことがひとつ。


彼はときどき文庫本から顔を上げて、窓の外に目をやることがある。


その目はとてもまっすぐで、....普段の彼より、やさしくて。



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