笑顔、こもれび。
窓から見える中庭に何があるのだろうかと気になって、彼が用事で席を立っている間に、外を見下ろしたことがある。
中庭には木が何本か植えられていて、柔らかな陽射しを受けて、木漏れ日がゆらゆらと揺れる。
その木の幹に背を預けて、文学少女のごとく本を読む、女子生徒。
彼が見ているのは、どうやら彼女のようだった。
*
名前は、朝木めぐ。
私達と同じ二年生で、図書委員をしている。
毎週火曜と金曜に、図書室のカウンターに座っている彼女。
どうやら天気のいい放課後は、いつも木陰で本を読んでいるらしい。
その空間だけ小説の中に迷い込んだかのような雰囲気があって、女の私でさえ見惚れた。
そんな朝木さんを見つめる、彼の横顔を垣間見る内に、私は気づいたのだ。
彼が私に勉強を教えることを承諾した、理由を。