笑顔、こもれび。


きっと、この自習室を使うため。

私に勉強を教えるという名目で、先生から普段は使えないこの自習室の鍵を借りたのだろう。

ちょうどここの窓は、あの木の目の前だから。

どうしてかなんて、いくら馬鹿な私でも、わかってしまう。


静かにやさしく、色づいた瞳で。

夏目くんが、朝木さんに恋をしていること。


知って、しまった。

だからといって、どうするつもりもない。

私の性格なら、ここぞとばかりに彼をからかったかもしれないけど、今回ばかりは気が引けた。

私の記憶が正しければ、たぶん。

朝木めぐには、彼氏がいる。





次の週の火曜日、昼休みに私は図書室を訪れていた。

私はこれでも、読書家だ。

夏目くんほどではないけど、図書室の利用も多い。特に恋愛小説が好きだ。

だから私は、図書委員の朝木さんと知り合いだった。


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