笑顔、こもれび。
きっと、この自習室を使うため。
私に勉強を教えるという名目で、先生から普段は使えないこの自習室の鍵を借りたのだろう。
ちょうどここの窓は、あの木の目の前だから。
どうしてかなんて、いくら馬鹿な私でも、わかってしまう。
静かにやさしく、色づいた瞳で。
夏目くんが、朝木さんに恋をしていること。
知って、しまった。
だからといって、どうするつもりもない。
私の性格なら、ここぞとばかりに彼をからかったかもしれないけど、今回ばかりは気が引けた。
私の記憶が正しければ、たぶん。
朝木めぐには、彼氏がいる。
*
次の週の火曜日、昼休みに私は図書室を訪れていた。
私はこれでも、読書家だ。
夏目くんほどではないけど、図書室の利用も多い。特に恋愛小説が好きだ。
だから私は、図書委員の朝木さんと知り合いだった。