笑顔、こもれび。
「あ、西森さん」
借りたい本を持ってカウンターに行くと、案の定朝木さんが座っていた。
その姿は、古き良き女学生みたいだ。
彼女を見る度、私は夏目くんを思い出すようになっていた。
「今日も恋愛小説なんだね。あ、私もこれ読んだことあるよ。すごくよかった」
バーコードを読み取る、ピ、という機械音。
朝木さんは慣れた手つきでマウスを操作すると、私に本を手渡した。
「返却は二週間後です」
「...ありがとう」
今日はなんだか、上手くわらえなかった。
そのまま教室へ戻ろうかと思ったけど、足が動かなくて。
カウンターの隅に置かれた紙箱に、目が止まった。
「わあ。この栞、可愛いね」
後ろにまだ人が来ていないことを確認して、話しかける。
紙箱の中には押し花の栞がいくつも入っていて、朝木さんが「ありがとう」とわらった。