ふたりごと。
コインの表と裏、それでもS極とN極
君がいいよっていうから、僕はいやだっていう。
君が好きだっていうから、僕は嫌いだっていう。
君の気を惹きたくて、あえて反対の言葉を言い続けた。
「きら、い」
『嘘だ、好きなんだろ』
それなのになんで、どうして、俺は好きな子の恋を成就させようとしているんだろう。
『ほら、先輩行っちゃうよ』
離れていくその後ろ姿を愛しそうに、でも悲しそうに見つめているのを見れば、すぐわかるのに、なんで本人は認めないんだ。
「……あ、、の」
そんな小さな声じゃ、このそよ風にだってさらわれる。
なんで、俺が。
もう幾度となく頭に浮かんだ言葉を呟いて、
『せーんぱーい』
ようやく振り返った先輩に、彼女を押し出す。
来た道を戻ってくる先輩に、はっとしたように自分から距離を詰める彼女はやっぱり可愛いくて、幸せを願いたい。
できれば、俺との。
でも、いまはいいんだ。
これから、何年も友達、として付き合っていければ。
とりあえずいまは、
「ありがとう」
そう、別の男のとなりで笑っている彼女を1番近くで見ていられればいい。
だって、いつか、あいつも俺のよさに気づく………かもしれないし、気づかないかもしれないから。
(了)