彼の鯛焼きにはあんこが入っていない


も、もうダメ…。


膝をつきそうな私は、なんとか西山に支えられて立っていた。


「次で最後だ。アンコ投げろ」

「あんこ、投げる?」


思わず声が裏返った。


「アンコだよ、アンコ‼︎小豆渡しただろ⁉︎」

「え⁉︎あれ要るの⁇」

「ばっ、あれがないと終わんねーだろうが‼︎」

「知らないわよそんなこと‼︎」


何度目かの小競り合いをよそに、ステージからはまさかのアンココール‼︎が。


「マジでやべぇ。お前のせいだかんな‼︎」

「うるさい‼︎」

「なんとかしろよ‼︎」

「なんとかって…」


どんどん盛り上がるアンココール。


ここはなんとかしないと、なんとか…。


「に、逃げるか⁇」

「ダメ‼︎住民の期待は裏切っちゃダメなの‼︎私だって、私だってゴボちゃんだったんだ…」

「ゴボちゃんて、あの、ゆるキャラ界の異端児?まさか、お前が⁇」

「やるしかないわ‼︎」


着ていたTシャツを首から脱いだ。ちょうど濃い茶色だ。


「おい、何すんだよ‼︎」

「場所、変わって‼︎」


頭と尻尾を入れ替わり、私は顔だけTシャツから出したまま、口から飛び出した。


「ぼく、ゴボちゃん‼︎」




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