彼の鯛焼きにはあんこが入っていない
なんて歌なんだろう。
おいらは思った。
勇気づけられると同時に、こう、鱗の辺りがむず痒い。
切ないとは、こういうことか。
歌声と香りに引き連れられ、仲間が1人、また1人と旅立っていく。
おいらたちの間で、この曲はこう呼ばれていた。
(legend♪song)
伝説は代々、受け継がれ、おいらははたと気づく。
そうさ。
おいらだって、おいらたちだって自由じゃねーか‼︎
「旅立とうぜ‼︎自分の意思で‼︎」
仲間に呼びかけるが、誰もが腰が引けている。
ここはそうだ、おいらが伝説を塗り替えて、あとの代に託せばいい‼︎
「おい親父‼︎おいらは行くからな‼︎」
「まだアンコ入れてねーのに、いっぱしの口きくんじゃねー‼︎」
「邪魔はさせねー‼︎」
大量のアンコを乗せたヘラをヒョイと避け、おいら
は店を飛び出した。
アンコがなけりゃ、身軽なもんよ。
やっぱり行き先は…。
海だ。
チャプンと飛び込み、ひらひら泳ぐ。
やっぱいいやね。
あんな狭苦しい鉄板で毎日毎日、そりゃ嫌になるってもんさ。
なんて広いんだ。
なんて青いんだ。
アンコねーから、底まで潜れないけど、おいらは自由だ。
自由なんだ‼︎